野菜スープ

 

がんの治療中は病院での治療が中心ですが、退院してから、家庭での食事に悩む患者さんは多いようです。

 

 野菜をスープにすると胃腸に負担をかけずに、スムーズに栄養を吸収することができます。治療後の体力回復や再発防止の対策としても、私は野菜スープをとることをお勧めします。

 

 余命宣告をされた人が野菜スープで延命した例もある

 

 こんな例がありました。

 

 がん治療を終えた70代のある女性は、治療は成功したものの、治療後、体調がすぐれず困っていました。そこで、野菜スープを飲みはじめたところ、徐々に回復し、今ではすっかり元気になったとご家族が話してくれました。

 

 大腸がんになった60代の男性は、抗がん剤を使っても、余命は1年と医師に宣告されました。男性は抗がん剤に加えて、ホウレンソウなど緑黄色野菜を中心にした野菜スープをとるようになりました。野菜スープを食べると、血液の流れがよくなるのがわかると、そのかたは話してくださいました。

 

 男性はがんと共存しながら、旅や趣味を楽しみ、ふだんどおりの日々を10年間送って亡くなりました。生活の質を保ち、穏やかに暮らすことができたのです。

 

コラム 「ビタミンCは熱に弱い」は誤解

 

 野菜を煮てスープにすると言うと、「ビタミンCが壊れるのでは?」と思われるかたが多いでしょう。

 

 加熱するとビタミンCが壊れるというのは、あくまでビタミンCを単体で熱した場合です。実験室で化学的にビタミンCの溶液を蒸留水に入れ、30分ほど加熱すれば大半は消失してしまいます。

 

 一方、野菜の加熱調理では、ビタミンCが壊れる心配はほとんどありません。

 

 多くの野菜やジャガイモなどのイモ類は、まるごと煮込んでもビタミンCの大半は残っています。スープを飲めば、ビタミンCをとることができます。

 

 これはお茶にも言えることです。緑茶は製造過程で茶葉を加熱し、さらにお湯で淹いれますが、ビタミンCを豊富に含んでいます。

 

 なぜ、加熱してもビタミンCが失われないのでしょうか?

 

 それは、野菜に含まれるビタミンEやファイトケミカルなど、ほかのさまざまな抗酸化物質の働きで、ビタミンCが安定して分解されにくくなるからです。また、ビタミンCも、ほかの成分の酸化を抑えて安定させます。

 

 いろいろな野菜を一緒に煮込めばスープが味わい深くなり、抗酸化物質の種類も多くなります。成分同士が協力し合って互いを保護し、抗酸化パワーを増強することができます。

 

 野菜スープにすると、ほとんどのビタミンCやファイトケミカルはスープに溶け出しますが、野菜の具にも抗酸化物質は残っています。私たちの実験では、スープだけよりも具もすべて食べるほうが、抗酸化作用が高くなるという結果が出ています。スープは具も一緒に食べましょう。

 

コラム 副作用のない抗がん剤の研究

 

■治療のほうが病気の苦痛よりひどい

 

 今日のがん治療は、化学療法にしろ、放射線療法しろ、なんらかの副作用が出るという問題をはらんでいます。

 

 化学療法や放射線療法は、体内で大量の活性酸素を作って、がん細胞を殺傷すると同時に、正常な細胞も区別なく殺してしまうからです。

 

 その結果、白血球の減少、おう吐、吐き気、食欲不振、脱毛、手足のしびれ、下痢、発熱、感染症、腎障害、肝障害、心不全などの副作用が生じることがあります。患者さんの中には、「治療のほうが、病気の苦痛よりはるかにひどい」と言われるほど、副作用で苦しめられる場合があります。

 

 しかし、副作用を伴いながらも、化学療法や放射線療法で効果を得られる患者さんはいます。医師も、患者さんの生活の質を保ちながら治療を行いたいと考えていますが、結局は、化学療法の効果と副作用を天てん秤びんにかけながら標準治療(手術、化学療法、放射線療法)を進めざるを得ないのが現状です。

 

 一方で、効果が得られない患者さんがいるのも事実です。その原因は、抗がん剤ががんに届きにくい点にあります。

 

 がんを取り囲む血管の多くは、血栓ができて血管が詰まっています。点滴などで抗がん剤を血管から入れても、薬剤は全身に拡散してがんになかなか作用しないのです。

 

 2000年以降、がん細胞特有の遺伝子を狙い撃ちする分子標的薬が開発されました。理論上はがんを効率よく攻撃できるはずでしたが、治療効果はかんばしくありません。固形がん(血液のがん以外)は、がん細胞が常に変異しているため、目印となるターゲットが定まらず、狙い撃ちができないからです。